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書評とよべればいいけれど

本の紹介ブログです。解説というよりは感じたことを中心に、その本が読みたくなるような記事をめざします。

【書評】フィンランドを訪れる前にちょっと一冊 『かもめ食堂』

ほのぼの 小説

フィンランドを訪れることになったら、この作品を読まないわけにはいかない。

群よう子さんの『かもめ食堂』です。

小林聡美さん主演で映画化もされている作品です。

 

かもめ食堂 (幻冬舎文庫)

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かもめ食堂 [DVD]

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サチエは単身フィンランドに渡って、「かもめ食堂」というお店を開きます。

そこには日本かぶれの青年や、観光を目的とせずにフィンランドにやってきた日本人女性。

店を睨み付ける人もいれば、身なりがあまりよくない人もやってくる。

皆それぞれいろんな事情があるけれど、それを包み込むようなお店と人々がそこにはあります。幸せな気持ちになる物語です。

 

この作品を読んで

 

かもめ食堂』では、途中で大きな事件が発生するかというとそんなことはなく、穏やかにそして朗らかに物語が進んでいきます。

「皆それぞれいろんな事情がある」と書きましたが、日本かぶれの青年についてはそういった描写がありません。

毎日のようにやってきて、片言の日本語をしゃべる彼はどこか憎めなくて、

この作品を一段と朗らかにしている気がしました。

あと、無性におにぎりが食べたくなります。

炊きたてほかほかのご飯でつくるおにぎり…!

フィンランドでごはんやさんか。いいなあ。

そんな気持ちになるのは私だけではないはずです。

 

小説『かもめ食堂』と映画『かもめ食堂

 

小説を読んだ後、映画を観ました。

皆さんは、小説とその作品の映画があったら、どちらを先に手にしますか?

私は多くの場合、小説を先に読みます。

映画を先に観ると、私の場合、小説を読んでいるときの頭の中が、すべて映画そのままになってしまい、その作品の世界をまるごと想像するという楽しさがなくなってしまうからです。

もちろん、どちらが先の方がいいというわけではありません。

上記のような理由で、映画を先に観ると、その作品の世界を想像しやすくなって楽しいという方もいると思います。つまりは好みですね。

 

今回小説を読んで、そしてその後に映画を観て感じたこと。

まず小説と映画の共通点、その世界に流れる空気感です。小説を読んでいて感じた穏やかな空気・朗らかな空気を、映画でも感じました。

そして異なる点。

小説『かもめ食堂』では、それぞれの登場人物の行動の背景を丁寧に語っています。

サチエはどんな流れで日本からフィンランドへやってきたのか。

ミドリはなぜフィンランドへやってきたのか。なぜ地図を指さしたのか。

そこの流れがきちんと描かれています。

映画ではそのあたりがあまり描かれていません。

あと、おにぎりの浸透具合。小説では最後、おにぎりを現地の人が食べてみて「おいしい気がする」と述べますが、映画の「かもめ食堂」では、最終的に、いろんなお客さんがおにぎりを注文して食べる様子が描かれます。

つまり、小説は登場人物の過去にもスポットをあてながら物語が進み、おにぎりが受け入れられる頃までを、

映画では過去はあまり語らず、おにぎりが浸透する頃までを中心に描いているのだと思いました。

サチエがお店を開いてから、おにぎりが受け入れられるまで。この期間は共通していますが、小説はそれより前を、映画ではそれより先を少しずつ描いているのではないでしょうか。

 

小説『かもめ食堂』と映画『かもめ食堂』。

この2つは同じ空気感を持ちながらも、描いていることは全く同じではなくて、

だからこそ、小説と映画の両方を手に取ってほしい。

片方だけのときよりも、『かもめ食堂』という作品を、より立体的に感じることができると思います。

 

フィンランドを訪れる予定のある人だけではなく、

あたたかい作品を読みたい人におすすめの一冊です。