読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

書評とよべればいいけれど

本の紹介ブログです。解説というよりは感じたことを中心に、その本が読みたくなるような記事をめざします。

【書評】なぜ本を読むのか?『夜を乗り越える』

お気に入りの本 ほのぼの エッセイ 衝撃

又吉直樹さんの『夜を乗り越える』を読みました。

 

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

 

 

お笑いコンビ・ピースの又吉さん、自身初の新書です。

これ、本当に読んでよかったです。

どんな内容かというと、

「なぜ本を読むのか」「文学とは何か」といった問いを、又吉さんが自身の経験を基に考えていく感じ。

話しているような文体で、とても読みやすいです。

 

私にとってこの本は、

「自分が本を読む理由を、整理すると同時に身をもって感じることができる本」

でした。ではなぜそう思ったか。

又吉さんは本の魅力を「感覚の確認と発見」という言葉で表しているので、その2つに分けてお話しします。

 

感覚の確認

又吉さんはご自身の幼少時代を以下のように振り返っています。

 みんなは僕がいつもそんな風に振る舞うから、僕のことを明るい人間だと感じていたと思います。でも、本当は葛藤していました。自分は、本当はこんなキャラクターではない。こんな明るい人間ではない。そんなことを誰にも相談できず、ずっと自分の中だけで考え続けていました。

 

私もそうでした。自分は本当はそんな人間ではない。

「自分が考える『自分』」と「周りが考える『自分』」の乖離。

今でこそ、そのどちらもが自分だと思えるのですが、そう思えなかった頃は、苦しむときもありました。そして又吉さんと同じように、私もその悩みを誰と分かち合うでもなく、考え続けていました。

この本を読んで、ようやく一人じゃないことに気付くことができました。嬉しかったです。

その頃のつらさを思い出したからか、共感に出会えたからか、涙が出てきました。

 

さらに、本の魅力について考える章ではこのように書いています。

僕が本を読んでいて、おもしろいなあ、この瞬間だなあと思うのは、普段からなんとなく感じている細かい感覚や自分の中で曖昧模糊としていた感情を、文章で的確に表現された時です。自分の感覚の確認。つまり共感です。

(中略)

言葉にできないであろう複雑な感情が明確に描写された時、「うわ、これや!」と思うんです。正確には「これやったんや」と思っているのかもしれません。自分の心の中で散らかっていた感情を整理できる。 

 

 私にとってこの本は、「昔の自分ってこういう状態やったんや」であり、

「本を読んで衝撃を受けるっていうのは共感やったんや」でした。

共感のダブルパンチです。

 

感覚の発見 

読書のもうひとつの魅力について、又吉さんは引き続きこのように書いています。

 本を読むことによって、これまで自分が持っていなかった新しい感覚が発見できることです。例えば中高生の頃、本の中で不倫がテーマとして描かれていたら、もちろん自分には経験がないけど、主人公がどんな判断、言動をするのか、それを知ることも感覚の発見のひとつです。もしくは、自分が経験でき得る状況にあることが描かれている場合でも、「え、そこでそうするんだ」「なるほど、その手があったか」というのも感覚の発見だと思います。

(中略)

言い換えれば読書によって今までなかった視点が自分の中に増えるということです。

 

この読み方自体も私にとっては発見でした。

私は読みながら、「もし自分だったらどうするか」「自分とここは同じでここは違う」というようなことを考えます。

しかしそれを「感覚の発見」と捉えて、視点を増やすことはできていませんでした。

 「なるほど、この読み方があったか」「うわ、これが感覚の発見か」となったわけです。

 

このように、私はこの本を読んで、「感覚の確認」と「感覚の発見」を感じるとともに、その感情を「感覚の確認と発見」だと整理することができたのです。

 

まとめ

この本は、

日頃本を読まないけど読書が気になっている人

はもちろん

読書が大好きな人にもおすすめしたい一冊です。

 

他にも、いろんな人におすすめしたいです。

例えば近代文学が気になっている人。

今まで近代文学を敬遠してしまっていた私ですが、読んでみたくなりました。

 

『火花』を読んだ人。

『火花』を執筆した背景がちらりと見えて、もう一回読みたいなと思いました。

 

ピースのコントが好きな人。というか又吉さんを知っている人。

又吉さんのエッセイを読む感覚でぜひ手に取ってみてほしい。

私もきっかけはこれでした。

自分以外の人がどんなことを考えているのか、それが垣間見えるのはエッセイの面白いところだなあと思っています。

 

又吉さんはきっと、自分のように悩む人が、自分のように本に助けられる機会をつくろうと全力でこの本を書いたのだろうなあ。

それが読み手に伝わってくる、あたたかい一冊です。