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書評とよべればいいけれど

本の紹介ブログです。解説というよりは感じたことを中心に、その本が読みたくなるような記事をめざします。

【書評】旅に出るという選択肢を与えてくれる小説『うつくしい人』

私には大好きな場所があります。

それは瀬戸内海の島々です。

一昨年訪れてからというもの、それはもうはまってしまいました。

いつ行っても穏やかな瀬戸内海と、島に流れるのんびりとした空気、美味しい食べ物…

ああ非日常。

素朴と洗練が共存しているあの島々が大好きなのです。

 

その島へ一緒に行った友人が教えてくれたのが、今回の題材です。

「あの小説は多分この島が舞台になってるよ」と。

大好きな場所と大好きな作家さんが揃ってしまっては、読まないわけにはいきません。

今回の題材は、西加奈子さんの『うつくしい人』です。

(少なくともあとがきでは、島の名前は明言されていないので、そこについては書かないでおきます。)

 

うつくしい人 (幻冬舎文庫)

うつくしい人 (幻冬舎文庫)

 

 

ある日ぷつんと糸が切れたようになってしまった主人公・百合が、ふと思い立って向かった島。百合の心は、そこで出会う人や過ごす時間によってほぐれていく。

ざっくり言うと、こんな感じのお話です。

あらすじからも分かるように、瀬戸内海のように穏やかな小説です。

言い方を変えれば、大きな波はなく、ストーリーを追って読んだ私にとっては、話の細かいところをずっと覚えている、という作品ではありません。

しかし、この本は近くに置いておきたい。

その理由を書いてみようと思います。

 

この作品を読んで

西加奈子さんはあとがきで、このように書いています。

 執筆に取りかかった当時、私は、心の表面張力がぱんぱん、無駄な自意識と自己嫌悪にさいなまれ、うっかり傷つく中二状態が続いていた面倒な三十路女性で、些細な出来事を敏感に受け取り、いや受け取りすぎ、何かしらびくびくしては、酒を食らって泥酔、翌日東京を出ようと決心して布団から出ない、ということの繰り返しでした。

 

なんかもう、めちゃめちゃわかります。

「無駄な自意識と自己嫌悪」「些細な出来事を敏感に受け取りすぎる」「何かしらびくびくする」

あるあるーーーーーって感じです。

これが、この作品を執筆していた時の西さんであり、この作品の主人公なのです。

 

私がこの作品を読んだ時は、島に行った直後というのもあり、比較的ご機嫌でした。

つまり上記のような状態ではなくて、ストーリーを追う読み方でこの作品を読みました。

しかしもし、上記のような、西さんのような状態だったら。

この主人公は自分で、自分はこの主人公で、

自分のことのように作品を読んで、そうしてすっきりする、というような読み方になっていたのではないかと思います。

 

つまり、主人公のような状態になってしまったとき、

そんなときはまずこの作品を読もう。そう思ったわけです。

この作品を読んですっきりしたり、はたまた旅に出たくなったり。

きっと読んだ後、行動できるのではないかなと思っています。

 

まとめ

今回ご紹介した『うつくしい人』は、読み手が感情移入しやすい登場人物がいて、その登場人物が前を向くことで、読み手も前を向くことができる、そんな作品だと思います。

『サラバ!』もまた然り、ですね。

いやはや、悩んだ時には西加奈子作品!

引き続き他の作品も読んでいきたいと思います。

 

 

その他の西加奈子作品の記事はこちら↓

 

c82.hatenablog.com