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書評とよべればいいけれど

本の紹介ブログです。解説というよりは感じたことを中心に、その本が読みたくなるような記事をめざします。

【書評】クリスマスにちょっぴりひねくれた小説はいかがですか?『太陽の塔』

恋愛 小説 お気に入りの本

今回の題材はこちら、森見登美彦さんの『太陽の塔』です。

日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作品です。

 

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

 

 

 

失恋にとらわれていないと言い張る主人公とその仲間たち(とくくることができないほどキャラの濃い面々)が、クリスマスの波にのまれまいと師走の京都を右往左往するお話です。

 

私はこの作品を読んですっきりしたかといえばそうではなく、

何かを得たか・何かを考えたかというのもそうではなく、

ただ読んでいて愉快愉快、そんな作品でした。

 

何がいいって、主人公とその仲間たちの言いぐさ。

自分たちは悪くない、まわりが悪いんだそうだそうだ、って言いながら、

でも心のどこかでは気付いてる、みたいな悲哀を彼らから感じます。

たとえばこんな感じ。

 

 しかし、私が女ッ気のなかった生活を悔やんでいるなどと誤解されては困る。自己嫌悪や後悔の念ほど、私と無縁なものはないのだ。かつて私は自由な思索を女性によって乱されることを恐れたし、自分の周囲に張り巡らされた完全無欠のホモソーシャルな世界で満足していた。

 

 

何言ってんだ、を通り越して、愛おしい。そんな言葉がぴったりな気がします。

思えば『恋文の技術』の主人公もそうでしたね。

 

愛おしいとはいえ、そんな男だらけの話なわけで、むさくるしさを感じてしまうかもしれません。

しかし、そこはいつもの森見節、なんだか上品な気さえしてくるわけです。

森見さんの文体は独特ゆえ、好みもわかれるようですね。

私は、言い回しや文章のリズム感が心地よくて好きです。

 

この作品で述べておきたいことはもう一つ。

太陽の塔を見に行きたくなります。

タイトル通り、大阪・万博公園にある太陽の塔が作品内でも登場するんですが、

その描写が、たとえばこちら。

 「つねに新鮮だ」

そんな優雅な言葉では足りない。つねに異様で、つねに恐ろしく、つねに偉大で、つねに何かがおかしい。何度も訪れるたびに、慣れるどころか、ますます怖くなる。

 

太陽の塔に行ったことのある人もない人も

今すぐ行きたくなるのではないでしょうか。

 

さて、クリスマス前といえば、まさに今の時期。

作品の中のイルミネーションは現実的で、

作品の中で繰り広げられる問答は非現実的で、

この対比がおもしろい。

だからこそいま読んでほしい、

ちょっぴりひねくれたクリスマスのお話です。