書評とよべればいいけれど

本の紹介ブログです。解説というよりは感じたことを中心に、その本が読みたくなるような記事をめざします。

【書評】旅行好きな人には『深夜特急』を読んでほしい

「今度イギリスまでいくんだ!」と言われたら、

いいなあ、とか、ほうほう、とか、いつ?とか、そんな反応をしますよね。

そのときに「どんな手段で行くの?」とはなりづらいです。

飛行機が普通だからです。

 

そんな「普通」を壊してくるのが、今回の題材、

沢木耕太郎さんの『深夜特急』です。

沢木耕太郎さんの旅行経験を基にした作品です。

どこまでノンフィクションで、どこからフィクションなのかわかりませんが、

主人公の描写は沢木さんご本人が思ったこと・感じたことなのかなと思っています。

 

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

 

  

冒頭でお話しした「イギリスまで行く」人、これがこの作品の主人公です。

でも彼は飛行機でびゅーんとは行きません。

彼はインドからイギリスまで、乗り合いのバスで行くんです。

私は本編を読む前、あらすじを読んで、「えっ?」となりました。

そんなこと考えたことなかったからです。

 

でもユーラシア大陸、つまり地続きなわけで。

そっかそっか行けるのか…行けるのか?となりました。

読む前から愕然とした私ですが、さらに驚きなのが、

旅行に行く前の主人公が持っていた情報は、読む前の私のそれとそんなに変わらないんですよね。

イギリスまでバスで行けるかを友人と賭けてるくらいです。

なにより行動力がすさまじい。

自分には到底できません。

 

私は計画するのが好きというのもあり、旅行の前にはいろんなことを調べます。

これは主に、旅行へのわくわく感が高まるというのもあるんですが、

やはり、見知らぬ地でのハプニングがこわいというのもあります。

せっかくなら行きたいところには行きたいし、食べるなら美味しいものを食べたい。

 

私はよく、とある友人と旅行に出かけるのですが、

一時期、ほぼ毎回「本日は誠に勝手ながらお休みさせていただきます。」というお知らせに出会っていました。

これは事前調査によってわかることもあれば、行ってみないとわからないこともあるわけで、

それならできることは事前にやっておこうじゃないかと、どんどん調べるようになりました。

それでも突然のお休みはあるんですが、いまやこのハプニングを楽しむことができるようになってきました。

どのハプニングもこうやって楽しめたらいいのですが、やはりそのときの焦りを思うと、準備したくなってしまいます。

 

でも旅行のハプニングって、出会ったときは焦っていたのに途中から楽しくなったり、あとで一番思い出すのがそれだったりしますよね。

あとで人に話すのも案外その部分だったりします。

 

そう考えると、ハプニングにもいいことあるじゃんと、この記事を書きながら思いました。

とりあえず国内から始めてみようかなあ。無計画の旅。

 

まとめ

 

この作品を読んで、自分は限られたところで生きているのだなということも感じました。

深夜特急』は、その限られたところから連れ出してくれます。

きっと地図を横において読んでも面白いんだろうなあ。

 

旅行は好きだけど、「放浪」は考えたことない人、

興味はあるけどちょっとまだこわい人、

おすすめです。

 

…と長々と書いてきましたが。

まだ、6冊ある文庫のうちの1冊目なんです。まだマカオにいるんです私。

インドでもないです。

ただこの読み始めの気持ちを残しておきたくて、このように記事を書いてみました。

6冊を読み終わるころにはきっとまた何か感じるところがあるのではないかと思います。

 

ということで、再び脳内ユーラシア放浪に行ってきます!

【書評】辞書を読む ー『辞書になった男』ー

今回のテーマは辞書です。

辞書の中でも紙の辞書。

 

皆さんはどのような目的で辞書を使っていますか?

 

私は最近まで、「言葉の意味や使い方を調べるため」に使っていました。

私にとっての辞書全盛期は小・中学生の頃。

塾か学校かどちらかの方針で、新明解国語辞典を使っていました。

 

そんな辞書も、気付けば電子辞書やネット検索に追いやられ、

本棚の奥にただただ立っているだけの状態が続きました。

 

そんなとき、辞書を久しぶりに取り出すきっかけとなる2冊の本に出会いました。

 

1冊目は三浦しをんさんの『舟を編む』。

本屋大賞を受賞し、映画化もされた作品ですね。

いずれこちらについても書けたらなあと思っています。

 

そして2冊目。今回はこちらについて書いてみようと思います。

佐々木健一さんの『辞書になった男 ケンボー先生と山田先生』です。

NHKで放映された番組を書籍化したもので、ノンフィクション作品です。

 

きっかけとあらすじ

普段小説以外をあまり読まない私が、読むことになったきっかけ。

それは学校の図書館にあった本の福袋です。

本の福袋、普段手に取らない本に出会える素敵な企画ですよねえ。

 

それなりに厚さもあり、読めるかなという不安はありましたが、

面白い語釈の数々に引き込まれ、ぐんぐん読んでしまいました。

あと終わり方が美しい!

 

タイトルからわかる通り、これは二人の辞書編纂者のお話です。

ケンボー先生は『三省堂国語辞典』を、山田先生は『新明解国語辞典』を作り上げた方です。

このお二人はかつて一つの辞書を作っていました。

それがどうして別々の辞書を作ることになったのか。

お二人の対象的な語釈やエピソードを交えて、その謎が徐々に解き明かされていきます。

 

あと、「え、辞書にこんなこと書いてあるの?」という語釈や用例もポイントの一つ。

用例にも意味があるなんて!

ちょっと家にある辞書を取り出してみようかしら、なんて思うはずです。

 

辞書を読む

 

辞書を引く。辞書を読む。

まさに一冊で二度おいしい!

 

辞書を読んでいると、

知っていた言葉の語釈に驚いたり、知らなかった言葉に出会ったり。

「この言葉ってこういう意味なんだよ!」

と皆に話したくなること間違いなしです。

 

といっても、辞書は厚い。読むのが大変です。

そんなときは、目をつぶって、えい!と辞書を開くのはどうでしょう。

「今日に限ってこんな言葉が出てくるか~!」みたいな楽しさがありそうです。

 

辞書を読む、なんだかわくわくしませんか?

【書評】悩める20代には『サラバ!』を読んでほしい

お久しぶりです。

現在ちょっと卒業に必要なあれを書いていまして、

更新が滞ってしまっております。にしのおでんです。

2月ごろからまたどんどん更新していきたいと思っているので、

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて。

 

昨年の夏ごろ、私はひどく暗い気持ちになっていました。悩んでいました。

もう何に悩んでいるのかもわからないまま、とにかく、

「何もやりたくない~~」という状態に陥ってしまいました。

 

そういうときに、私は小説を読みます。一種のリフレッシュ法です。

本を読んで気分転換する、という人は少なくないのではないでしょうか。

 

悩んでいた私は素直に「悩める20代 小説 おすすめ」とかそんな感じで本を検索し、

素直に読む本を決めました。

 

今回の題材は、西加奈子さんの『サラバ!』です。

 

サラバ! 上

サラバ! 上

 

 

サラバ! 下

サラバ! 下

 

 

直木賞を受賞した作品ですね。

読んでみたいけどハードカバー2冊か…

と、分量とお金を考慮して先延ばしにしていましたが、

ええい、背に腹は代えられぬ!

ぱーっと2冊一気に購入しました。

 

これが大正解。

 

悩んでいたことを忘れるくらい没頭して、読みました。

そして衝撃を受けました。

読んだ後の私は、読む前のうだうだな私ではありませんでした。

 

衝撃とは、まさに『何者』を読んだときと同じような衝撃です。

主人公のお姉さんの言葉が、私に向かってきて、突き刺さります。

自分は今までどうしてきて、これからどうしたくて、どうすればいいのか。

読みながら考えているうちに、もやは晴れていきました。

そうして、読んだ後しばらくは本棚には入れず、近くに置いておいて、

何度も何度も言葉を読み返しました。

 

悩める20代の私がそこから抜け出せた作品。

だから、そのまま悩める20代におすすめします。

それがどんな悩みでも、この本がそこから抜け出す一歩になる人は

私だけではないんじゃないかなと思うのです。

 

この作品は、主人公が生まれてから大人になるまでのお話。

こう言ってしまうととても直線的に聞こえてしまいますが、

この作品はとても奥行きがあります。

主人公とその家族の世界を、世界ごとみているような気がしました。

 

あと、私にとってはこれが初めての西加奈子さんの作品でした。

この作品を読んで、他の作品も読んでみたいと思いました。

その話はまたいずれ。

 

悩んでいる人、

まだ西加奈子作品を読んだことのない人、

ぜひ読んでみてください。おすすめです。

【書評】朝井リョウが朝井リョウたる所以 ー『学生時代にやらなくてもいい20のこと』-

今回は朝井リョウさんのエッセイ『学生時代にやらなくてもいい20のこと』について書いてみようと思います。

 

学生時代にやらなくてもいい20のこと

学生時代にやらなくてもいい20のこと

 

  

あれこれ書く前に、まずは私のお気に入りの部分から。

 

メロスのように走った。民家の前におじさんがいる。彼が私のセリヌンティウスだ。

 

どうですか、この鬼気迫る感じ。

この描写で、朝井さんのおなかの弱さについて書かれているんだから、余計面白いわけです。

11ページという序盤のこの部分で心をぐいと掴まれた私は、そのままページをめくり、1日で読み終えてしまいました。

それくらい読みやすく、読み終えてしまうのが惜しい1冊です。

 

あと、「自分は馬顔だ」という自虐エピソードが、定期的に入ってくるのもなんだか好きでした。

 

朝井リョウ朝井リョウたる所以

 

私は以前朝井リョウさんの3作品を一気にご紹介する記事を書きました。

 

c82.hatenablog.com

 

 

今回エッセイを読んで、小説を読んだ後に読んだからこその感想を持ちました。

それは、何かというと、「これが、朝井リョウ朝井リョウたる所以か…」です。

 

朝井さんの作品で印象的なのは、学生たちのリアルすぎる描写です。

そしてこの正体は、

朝井さん自身が同級生たちを外からみて (カーストでいうと下の方からみて) 感じたことなのだろう

と勝手に思っていました。

 

しかし、このエッセイに出てくるのは眩しいエピソードの数々。

カットモデルに500キロバイク、

島に船で行ったかと思えばリアル脱出ゲームにも参加しています。

 

つまり、「朝井さんが外から見ていた同級生」こそが朝井さん自身だったわけです。

上記のような体験を実際にして、中からみて感じたことが、

朝井さんの描写につながっているのではないか、

これこそが、朝井リョウたる所以、

以前書いた記事の言葉を用いるなら、「プロの学生」たる所以なんだ…と感じました。

 

と同時に、こんな感じで楽しんでいる人が『何者』とか書くの!?という混乱もありましたね。

朝井リョウさん、おそるべし。

 

きっとエッセイを読んでから小説を読んだら、小説の感想も違ったものになるような気がします。

 

星野源朝井リョウ

 

さて、以前星野源さんのエッセイについても記事を書きました。

 

c82.hatenablog.com

 

今回読んで思ったのは、「この2人、文体似てない?」

私自身エッセイ経験が豊富でないので、それが、

このお二人に限ったことなのか、

はたまた、エッセイというジャンルがそうなのかはわかりませんが、

そんなことを感じました。

そして、いいなあと。

私もこんな文章を書けるようになりたいものです。

 

それにしても、エッセイって面白いですね。

なんだかはまりそうです。

【書評】『スプートニクの恋人』で再挑戦

村上春樹さんの小説ってきくと、なんだか身構えてしまう。

きっと私だけじゃないはずです。

 

そう思いつつも、『ノルウェイの森』を読んでみたことがあります。

そのときは

「これが村上春樹さんの小説か…やっぱり難しかった…」

という気持ちでいっぱいになりました。

 

それから時は過ぎ、最近ふと『スプートニクの恋人』を読んでみようと思い立ちました。

今回は「村上春樹さんの小説」に再挑戦するお話です。

 

スプートニクの恋人』について

 

スプートニクの恋人 (講談社文庫)

スプートニクの恋人 (講談社文庫)

 

 

 

「ぼく」と「ぼくが恋する女性・すみれ」と「すみれが恋に落ちる女性・ミュウ」のお話です。

個人的には、前情報はこのくらいにしておいたほうが楽しめるかなと思っているので、この辺で。

 

スプートニクの恋人』を読んで

 

とっても読みやすかったです。

そしてどんどん続きが読みたくなる。

難しくない。

まだわからない部分もあるけど、それはそれでいい。

 

再挑戦してよかったと思いました。

 

そしてそう思えたのは、内容だけが理由ではないと感じています。

たとえば、私の年齢。

 

私がまだ読んだことのなかった頃、

両親に村上春樹さんの小説の面白さについて聞いたことがありました。

すると、

「最初はわからなかったけど、年を重ねるにつれて面白くなってきた」

と言っていました。ビールの感想みたいですね。

 

今回それがよくわかりました。

村上春樹さんの小説が醸し出す雰囲気に惹かれ始めた、という感じでしょうか。

 

なので、一度難しいと思っても、それはそのとき難しいだけであって、

再挑戦するとまた違う感想をもつのではないか、

そしてそれがひとつの魅力なのではないか、そんな風に思いました。

 

あともうひとつ。

今回読んでみて印象的だったのは、情景描写です。

独特で、丁寧で、リアルで、具体的。

似た言葉が集まっちゃいましたが、これが私の印象です。

 

物語を追うように読み進めていた私は、

それをじっくり読むということがどうもできませんでした。

しかしそれでも、物語を追う頭の中がとってもカラフルになっているのを感じました。

新たな小説の楽しみ方を知ることができた気がします。

 

まとめ

 

村上春樹さんの『スプートニクの恋人』。

私の読後感を一言でいうならば、

「面白かったです」ではなく、

「いい体験をしました」になると思います。

 

なんだか身構えてしまう人、一度読んで以来手に取っていない人、

ぜひ一度読んでみてください。

森見登美彦という作家

思えば、森見登美彦さんの作品ばかりとりあげている気がする。

そして、この方の作品の書評を書くとき、妙に筆が進む。

そして文体への影響が顕著。お付き合いください。

 

森見作品との出会い

 

私と森見作品との出会いといえば、あれは大学入りたての頃。

サークルに森見作品をこよなく愛するグループがあった。

結果として、私はそのグループには入らなかったが、

とにかく、そのグループの存在が「森見登美彦」という作家の存在を私に知らしめた。

 

私が森見作品を初めて読んだのもその頃。

夜は短し歩けよ乙女』のカバーデザインが可愛くて手に取ったのである。

しかしそのときの感想と言えば、「なんだかオカシイ小説だったなあ」という淡白なものであった。

『四畳半神話体系』もまた然り。

 

 

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

 

 

 

 

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

 

 

 

 

 

そこから幾月かたったころ、今度はサークルで『恋文の技術』という作品が話題になった。

やたらと森見さんの話題が出るサークルである。

因みにそこは音楽系サークルでありながら読書を趣味とする人も多く、

そして何より極めて森見ファンが多いサークルだった。

 

結果として、『恋文の技術』は私の心を揺り動かす素晴らしい作品であり、

今でも私はことあるごとにこの作品を読んでは、ほかほかと温かくなる。

私はこの作品を「生涯のお気に入りの一冊」認定しており、

それと同時に「森見登美彦」という名前も胸に深く刻まれることとなった。

 

と同時に、「オカシイ小説」の虜になっていることにも気づいた。

いまや立派な森見ファンである。

 

 

([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)

([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)

 

 

 

私が考える森見作品の特徴

 

森見登美彦の作品の特徴と言えば、あの文体と個性的な登場人物であろう。

個性的というか、「何言ってんだか」ということを言っている登場人物が多い。

その文体や人物が特徴的すぎるゆえ、好みが大きく分かれるのではないかと予想している。

 

かくいう私はというと、その特徴的すぎる文体や人物を愛し、

「何言ってんだか、あはは、やれやれ」と思い、

そこに可愛さなんて感じてしまっている。

つまりは気取っていないので、なんか肩でも組めそうなくらいの身近さもあるし、

だからこそ、すらすら書評が書けるのだと思う。

 

そして、そんな登場人物だからこそ、

物語からただよう哀愁がほのかに感じられて、

日常の呑気さとのギャップに胸を締め付けられたりもする。

ギャップ萌え小説である。

 

あと、彼の作品は総じてブックデザインがおしゃれ、だと私は思っている。

 

まとめ

 

ここまで語るとどうでしょう、気になってきたでしょう。

所属していたサークルを離れてからというもの、

森見さんの作品を読んでる人が周りに少ないのだ。サークルの特殊さがわかる。

 

だからもっと皆さんに読んでほしいのです。

絶対合うとはいえない、けれども、どんぴしゃの人もきっといるはず。

ぜひ読んでみてください。

 

 

森見作品の書評はこちら↓

c82.hatenablog.com

 

c82.hatenablog.com

 

c82.hatenablog.com

 

c82.hatenablog.com

 

【書評】竹林と『美女と竹林』と『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』

私は竹林が好きだ。

竹林といえば、たとえば京都の嵐山、伊豆の修善寺、鎌倉の報国寺

どこもそれぞれの趣があって、それぞれ美しい。

嵐山はその規模の大きさと薄暗さから、異世界に迷い込んだ感満載であるし、

修善寺は、明るく朗らかに竹林の良さを伝えている。

報国寺は、庭としての竹林使いが見事である。抹茶が飲めるのもまたよし。

 

しかし私の竹林好きというのは、全国津々浦々竹林を求めて歩き回るほどではなく、

ただ旅先に竹林があるという情報を聞きつければ、

「なんかいい感じの竹林があるらしいよ」と言って、行く流れに仕向けるくらいで、

おすすめ竹林も、先に挙げた有名どころ3か所くらいしかまだない。

 

とはいいつつも、冒頭でここまで書いてしまうくらいには好きだし、

つまりはこんなタイトルの本があったら手に取ってしまう。

 

『美女と竹林』、今回はこの本について書いていこうと思う。

著者は森見登美彦さん。

タイトルからわかるように、この本の中心にはいつも竹林がある。

いや、有るようで無いし、無いようで有る。

美女と竹林 (光文社文庫)

美女と竹林 (光文社文庫)

 

 

『美女と竹林』について

 

この本はエッセイのような顔をしている。

しかし本当に?

主人公は登美彦氏であるから、一見エッセイぽいのだけど、

読み進めるとどこまでが本当で、どこからが虚構なのかわからなくなってくる。

まあでもいいじゃない。そんな感じで構えて読んだらいいと思う。

 

彼はこの本の「孟宗竹分解法講義」の冒頭でこんなことを言っている。

 これから語ることは、多くの人にとって実益のないことですが、私はかつて裏山の和尚さんに「原則として実益のないことしか語ることができない呪い」を掛けられたものだから、もう諦めてください。 

そういうものである。

 

『美女と竹林』と『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』

 

この本には「森見登美彦(MBC最高経営責任者) 今、すべてを語る」という章がある。前編と後編。

これを読んで思い出すのは、『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』。

 

creatorsfile.com

 

ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』では、お笑いトリオ・ロバートの秋山さんがさまざまなクリエイターになりきっている。

先日しゃべくりにも出ていたので、ご存知の方も多いかもしれない。

 

さて、『ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル』には本もある。

クリエイターズ・ファイル Vol.01 (ヨシモトブックス)

クリエイターズ・ファイル Vol.01 (ヨシモトブックス)

 

 この本の中身は、秋山さん扮するクリエイターのインタビュー記事。

そのクリエイターが個性的すぎて中身も面白いんだが、何より、ふと、結局は嘘なんだよなあと思えてこれまた笑えてくる。

 

つまりは、「森見登美彦(MBC最高経営責任者) 今、すべてを語る」でも同じ読後感におそわれたという話である。愉快愉快。

 

まとめ

 

私はこの本を読んで、何かを得たとか感じたとか、ストーリー展開が好きだったとかそういうことはない。

しかし、この作品が好きである。

 

ただ、好き、というだけで、おすすめしたいか、というと別の話になってくる。

好みが分かれるだろうということを読んでて感じたからだ。

だからこの書評では、

こんな本があるんですよ、いやまあ、好き嫌いがあるとは思うんですが、それはそれとして、ひとまず読んでみるという選択肢もね、あります

と存在を示す。そんなところである。