書評とよべればいいけれど

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悩みを本にぶつけてきた理系女子が綴る書評ブログ!

【書評】『オンナの奥義 無敵のオバサンになるための33の扉』/ 大石静・阿川佐和子

「可愛いおばあちゃんになりたい」と言っていたあの頃

 

可愛いおばあちゃんになりたいと、高校生のころから思っていました。

にこにこしていて、穏やかで、料理も編み物も上手なおばあちゃん(形から入るタイプ)。

そんな長年の夢が揺れてしまったのがこちらの一冊。

 

大石静阿川佐和子『オンナの奥義 無敵のオバサンになるための33の扉』

 

 

脚本家の大石さんとエッセイストの阿川さん。

お二人が対談する形式なんですが、いやはや、強烈

そして憧れちゃう!

 

読みながら

「こんなオバサンに私はなれる?」

「あれ、なりたいの、私?」

「可愛いおばあちゃんは??」

と自問自答が止まらないんです。

 

具体的にどんな内容かというと…

 

こんな内容

 

結婚・恋愛・家族・死・更年期・仕事術など

誰しも考えるであろう身近な話題について、

お二人が赤裸々に語ってくださいます。

 

例えば

・アガワはなぜ、還暦過ぎて入籍したのか

・真実の愛は倫理を超える

・理不尽な父親との付き合い方

・どんな最期が理想か?

・いつ”誘われても”大丈夫な下着選び

・更年期は始まりも終わりもややこしい

・仕事ができる人には想像力がある

(見出しの一部を引用)

 

ね?話題の広さ思い切りの良さがすごいでしょ?

 

中には

「まったく共感できない!!」

というお話もありました。

しかし、そこはさすが、お仕事で「言葉」を扱われているお二人。

どんな話でも嫌味な感じがしませんでした。

あっけらかんとして、気持ちいい!

 

まとめ

 

この本で扱っているのは、結構繊細なテーマだったりします。

自身が上記の話題についてもし悩んだら…と考えると、

どんな人にでも相談できる内容ではないと思います。

 

そんなとき、この本をぜひ読んでほしいです。

 

笑えてきて肩の力が抜けるもよし、

自分にはなかった考え方に膝を打つもよし。

どう感じるかは人それぞれです。

 

でも、そんなことはお構いなしに、

私たちの前をきびきびと歩いてくれているお二人がいることは確か。

 

そう思わせてくれる、頼もしい一冊です。

【書評】『たゆたえども沈まず』/ 原田マハ

この作品を読むまでの私

・自分で高すぎるハードルを設定しがち

・他人の言動や態度に一喜一憂しすぎ

・会社を休む日が続き、復帰するのか異動するのか退職するのか悩む日々

 

『たゆたえども沈まず』 / 原田マハ

先日、『蜜蜂と遠雷』の書評で、「目で聴く音楽」という表現をしました。

 

c82.hatenablog.com

 

 今回は「読む絵画」。

原田マハさんの『たゆたえども沈まず』です。

 

画家・ゴッホ。彼の絵の背景には日本美術があった。

そして、彼と日本美術をつなげたのは、一人の日本人・林忠正

ゴッホの弟・テオや、林の後輩・加納重吉も含めた4人がどのように交わり、どのような人生を歩んでいくのか ―――。

原田マハさんが描く、史実をもとにした絵画の世界。とくとご覧あれ!

 

表紙はゴッホの『星月夜』という作品。

作中にも登場するのですが、読む前と読んだ後では、印象が全く異なります。

「強くて、悲しい」、

これが本作品への感想です。

今まで何作品か原田マハさんの小説を読んだことはありますが、その読後感とは全く違ったような気がします。

 

「たゆたえども沈まず」、これはパリを表した言葉だそうです。

花の都・パリの中心を流れるセーヌ川

幾度氾濫しても、人々は街を建て直してきた。

何度苦境に追い込まれようとも、この街は存在がたゆたいこそすれ、決して沈むことはないんだ。

激しい流れがやってきても、それに身を任せて、そしていずれは立ち上がるんだ。

そんな想いが込められているそうです。

 

そして、この言葉に関する私の好きな一文がこちら。

 嵐が吹き荒れているときに、どうしたらいいのか。――小舟になればいい、と重吉は言った。

「強い風に身を任せて揺れていればいいのさ。そうすれば、決して沈まない。……だろう?」

 

この本を読んだとき、私は沈みそうになっていました。

いろんなことを考えて考えて、深く深く。

そのときに、この一文を読んで、「そうだよな、揺れていればいいんだよな…」と。

私はなんでも考えすぎる性格で、それゆえ気にしすぎてしまうんですが、そんなに気負わなくていいんだよなと。

 

この作品を読んで私が決意したこと

・力を抜く練習をする!

完璧主義でいつでも全力投球だった私。

どんだけ時間をかけても自分で設定したハードルを越えるぞと息巻いていました。

しかし、それゆえ今回みたいに、急にぽきっと折れてしまったのかなと。

たゆたうには、もっと柔らかくなくちゃ。

ということで、いますぐに退職するのは一旦やめて、

まずは少しずつ力を抜いてみようと思います。

 

・「反応しない練習」をする!

(参考図書:『反応しない練習』/草薙龍瞬)

考えすぎ、まじめすぎ、やさしすぎ。

もっと受け流していいんだよ、皆言ってくれますが、

それがなかなかできない。

できないということは、身につける必要がある。

会社以外でも必要ですよね、このスキル。

 

『たゆたえども沈まず』。

悩んでいる心に、ぽっと明かりを灯してくれる作品です。

 

 

 

【書評】『蜜蜂と遠雷』/ 恩田陸

蜜蜂と遠雷』、なんと引き込まれることか。

目で聴く音楽に、私は初めて出会いました。

 

どんな本?

2017年、直木賞本屋大賞をダブル受賞した

恩田陸さんの話題作です。

 

芳ヶ江国際ピアノコンクールのオーディションから本選までを追う作品。そこにある数々のドラマ。

中心人物は、家にピアノを持たない少年や、かつての天才少女、優勝候補と名高い美少年、楽器店勤務のサラリーマン。

彼らがどうやってここまで来たのか。

何を考え、コンクールに臨むのか。

音楽に、何を感じるのか。

そして、その彼らだからこそできる演奏を、私たちは1人の観客として聴く。

読んだ後、小さな疲労と大きな達成感がやってくるのは、コンクールをずっと見守ってきた証ではないでしょうか。

 

書店ではその厚みが目を引きますが、

一度読み始めてしまえば、気にならなくなるはず。 

表紙を見てみてください。あの優しい色使い。

この作品の世界は、あの表紙のまま、ずっと最後まで優しくて、

居心地がとても良かったです。

 

クラシック音楽への興味

私は小さいころピアノを習っていましたが、

曲の背景を想ったことも、弾き方を工夫したこともありませんでした。

この作品を読んで、クラシック音楽が聴きたくなりました。

蜜蜂と遠雷』のCDを買いそうになりました。( 今でもまだ欲しい )

埃のかぶった電子ピアノに電源をいれて、弾いてみました。

楽譜の解説を読みました。今まで気づいていなかった音楽記号にも目が行きました。

どれもこれも、『蜜蜂と遠雷』を読んだから、起こした行動です。

この作品には、人を動かす「力」があると、私は思っています。

 

まとめ

蜜蜂と遠雷』、小説とクラシック音楽を繋ぐ作品です。

小説を好きな人がクラシック音楽を聴くようになる、

クラシック音楽を好きな人が小説を読むようになる、

そんな「きっかけ」を生み出す作品

ぜひ読んでみてください。

 

 

【書評】『本日は、お日柄もよく』/ 原田マハ

小説を読んで、その奥にいる作家さんを感じることってありますか?

例えば私の場合は、

「あ、この作家さんぽい作品だな」

「おや、この作家さんにしては珍しい作品だな」

と思うことはよくあります。

しかしそこから先に進んで、

「この作家さんはどんな方なんだろう、お会いしてみたいなあ」

と作家さんに思いを馳せることは今までありませんでした。

 

そんな私が原田マハさんに会いたくなった1冊、『本日は、お日柄もよく』。

OLの主人公・こと葉が伝説のスピーチライター・久美に出会い、その人のもとで修業する様子を描いた作品です。

 

 

この作品の一番の魅力。私は作中に登場するスピーチだと思います。

なんてったって、伝説のスピーチライターが登場して、

そのスピーチに、こと葉は衝撃をうけるのです。

 

つまり、読み手である私たちの心を動かすことができなければ、

こと葉に感情移入もできなければ、「伝説のスピーチライター」と認識することもできません。

なんということでしょう。

 

しかし原田マハさんは、それをなんなくやってのけます。

個人的には結婚式のスピーチ。人目もはばからず、電車内で涙しました。

原田マハさんの技が光る作品だと思います。

 

さて、なぜこんなにも原田マハさんに会いたくなるのか。

それは、こと葉と自分を重ね合わせているから、

そして、久美と原田マハさんを重ね合わせているからだと思います。

 

こと葉が久美に好奇心をもったように、

自分も、自分の心を動かす原田マハさんに。

「会いたい」という感情はきっとここからきているのでしょう。

 

すべての人にとって身近な「言葉」を扱う本作品。

スピーチの予定がある人はもちろん、そうでない人にもおすすめの1冊です。

【書評】『かもめ食堂』/ 群ようこ

フィンランドを訪れることになったら、この作品を読まないわけにはいかない。

群よう子さんの『かもめ食堂』です。

小林聡美さん主演で映画化もされている作品です。

 

 

サチエは単身フィンランドに渡って、「かもめ食堂」というお店を開きます。

そこには日本かぶれの青年や、観光を目的とせずにフィンランドにやってきた日本人女性。

店を睨み付ける人もいれば、身なりがあまりよくない人もやってくる。

皆それぞれいろんな事情があるけれど、それを包み込むようなお店と人々がそこにはあります。幸せな気持ちになる物語です。

 

この作品を読んで

 

かもめ食堂』では、途中で大きな事件が発生するかというとそんなことはなく、穏やかにそして朗らかに物語が進んでいきます。

「皆それぞれいろんな事情がある」と書きましたが、日本かぶれの青年についてはそういった描写がありません。

毎日のようにやってきて、片言の日本語をしゃべる彼はどこか憎めなくて、

この作品を一段と朗らかにしている気がしました。

あと、無性におにぎりが食べたくなります。

炊きたてほかほかのご飯でつくるおにぎり…!

フィンランドでごはんやさんか。いいなあ。

そんな気持ちになるのは私だけではないはずです。

 

小説『かもめ食堂』と映画『かもめ食堂

 

小説を読んだ後、映画を観ました。

皆さんは、小説とその作品の映画があったら、どちらを先に手にしますか?

私は多くの場合、小説を先に読みます。

映画を先に観ると、私の場合、小説を読んでいるときの頭の中が、すべて映画そのままになってしまい、その作品の世界をまるごと想像するという楽しさがなくなってしまうからです。

もちろん、どちらが先の方がいいというわけではありません。

上記のような理由で、映画を先に観ると、その作品の世界を想像しやすくなって楽しいという方もいると思います。つまりは好みですね。

 

今回小説を読んで、そしてその後に映画を観て感じたこと。

まず小説と映画の共通点、その世界に流れる空気感です。小説を読んでいて感じた穏やかな空気・朗らかな空気を、映画でも感じました。

そして異なる点。

小説『かもめ食堂』では、それぞれの登場人物の行動の背景を丁寧に語っています。

サチエはどんな流れで日本からフィンランドへやってきたのか。

ミドリはなぜフィンランドへやってきたのか。なぜ地図を指さしたのか。

そこの流れがきちんと描かれています。

映画ではそのあたりがあまり描かれていません。

あと、おにぎりの浸透具合。小説では最後、おにぎりを現地の人が食べてみて「おいしい気がする」と述べますが、映画の「かもめ食堂」では、最終的に、いろんなお客さんがおにぎりを注文して食べる様子が描かれます。

つまり、小説は登場人物の過去にもスポットをあてながら物語が進み、おにぎりが受け入れられる頃までを、

映画では過去はあまり語らず、おにぎりが浸透する頃までを中心に描いているのだと思いました。

サチエがお店を開いてから、おにぎりが受け入れられるまで。この期間は共通していますが、小説はそれより前を、映画ではそれより先を少しずつ描いているのではないでしょうか。

 

小説『かもめ食堂』と映画『かもめ食堂』。

この2つは同じ空気感を持ちながらも、描いていることは全く同じではなくて、

だからこそ、小説と映画の両方を手に取ってほしい。

片方だけのときよりも、『かもめ食堂』という作品を、より立体的に感じることができると思います。

 

フィンランドを訪れる予定のある人だけではなく、

あたたかい作品を読みたい人におすすめの一冊です。

 

 

【書評】『ジヴェルニーの食卓』/ 原田マハ

絵画。

絵が下手で手先は不器用、高校では脇目もふらずに音楽選択の私にとっては、遠い存在です。

絵画鑑賞に興味はあるんですが、どうにも楽しみ方がわからない。

そのまま「自分には難しい」と敬遠し、美術館に足を運ぶこともあまりありませんでした。

 

しかし、今回ご紹介する作品を読み終わったいま、美術館に行きたくなっている自分がいます。

今回は原田マハさんの『ジヴェルニーの食卓』について書いてみようと思います。

 

 

 この作品について

 この作品は4つの短編で構成されています。

それぞれの短編はすべて、実在する画家とまわりの人々のお話です。

マティスドガセザンヌ、そしてモネ。

物語は、それぞれの画家と交流のあった女性の口から語られ、ピカソゴッホも顔を出す。

読んでいると、頭の中が色鮮やかになる、そんな作品でした。

原田マハさんの作品は初めて読んだのですが、とても綺麗で読みやすい文章を書かれるのだなあという印象を持ちました。

手紙やインタビューに答える形式で話が進んでいく短編もあったので、一段と読みやすかったように思います。

 

絵画鑑賞と読書

 

絵画鑑賞とかけ離れた存在だった私ですが、読むうちに、作中に登場する画家の絵が気になって気になって、ついには検索しながら読んでいました。

どこかで鑑賞できないものかと美術館も探してしまいました。

私のように、「絵画ってなんだか難しそうで…」と感じている方にぜひおすすめしたい作品です。

 

一方、日頃から絵画鑑賞が好きな人が読んだらどんな感想をもつのでしょう。

きっと絵画鑑賞が好きな人にとっても面白いのではないかと思うのですが、読後感はきっと、私のそれとは違うような気がします。

 

さらに、絵画鑑賞は好きだけど読書は苦手な人。読書に興味はあるものの苦手意識を持っている人。

これはあくまで予想になってしまいますが、その人は、読書について、私にとっての絵画鑑賞と同じように感じているのではないでしょうか。

自分にはわからない。なんだか難しい。

もし絵画鑑賞に興味があれば、『ジヴェルニーの食卓』は、その人の読書への苦手意識を払拭することができる作品なのではないかと思いました。

ちょうど絵画鑑賞に苦手意識を抱いていた私が、美術館に行きたくなったように。

 

『ジヴェルニーの食卓』は絵画鑑賞と読書をつなぐ、そんな力のある作品です。

絵画鑑賞と読書どちらか、もしくはどちらも好きな人におすすめの一冊。

 

 

【書評】『ペンギン・ハイウェイ』/ 森見登美彦

先日、西加奈子さんの『まく子』について書きました。

 

今回は『まく子』と同じように、小学生が主人公の小説、

森見登美彦さんの『ペンギン・ハイウェイ』について書いていきます。

森見さんの作品はどれも表紙が可愛らしいですね。表紙が見えるように置いておきたい。

 

 

ペンギン・ハイウェイはこんなお話。

主人公のアオヤマ君は、毎日ノートをたくさん書く小学生。そんな彼が住む街に、ある日突然ペンギンが現れます。ペンギンの謎を解くカギを握っているのは、どうやら仲良しの歯科医院のお姉さん。アオヤマ君とその友人たちの冒険の物語、成長の物語です。

 

登場人物について

この作品は、他の森見作品に比べて文体が少しやわらかいです。

でもやっぱり、森見節は健在。

なんでしょう、森見作品に登場する大学生の小さい頃のようにも思えました。

他の森見作品同様、とても愛おしい登場人物たちです。

 

特にアオヤマ君やその友達。

彼らは、いろんなことを考えています。

読み始めは「こんなこと考えるかな?」と思ったのですが、「まさか考えているまい、と思うようなことを考えているのが子供」だということを思い出しました。

私も小学生の子と話すことがあるのですが、まさにそんな感じだなあと。

子供というのは大人が思っている以上に大人だ、という言葉を聞いたことがある気がしますが、まさにそれです。

そして知っていること総動員でいろんなことを考える。

以前ご紹介した『子どものことを子どもに聞く』でもそんな場面があったように思います。

 

いやはや、最近の自分は、世の中知らないことばかりだ、ということを知ってしまって、アオヤマ君たちのように知っていることだけで考えてみるということをしなくなってしまったような気がしています。

まっすぐなアオヤマ君たちが眩しかったです。

 

あと、他作品にも共通して思うことですが、森見さんの作品に登場する女性は魅力的な人ばかりですね。素敵。

 

作品の好きなところ

さて、この作品の終わり方。胸がきゅうっとします。

はあ。

私がこの作品で一番好きなところは、アオヤマ君の知っていることと知らないことの対比です。

アオヤマ君は、友人たちが知らないようなことも知っている、とても物知りな小学生です。

でも、友人たちがわかるようなことには疎かったりします。

知っていることと知らないこと。

そして「知らなかったこと」に気づくアオヤマ君。

この流れが本当に美しいなあと私は思いました。

 

『まく子』と『ペンギン・ハイウェイ

『まく子』と『ペンギン・ハイウェイ』。

どちらも主人公は小学生です。

この2作品から私が感じたことは、主人公が小学生だからこそ伝わるものがあるということです。

『まく子』は、子供でもわかる大切なこと、なのに大人になると忘れてしまうようなことを思い出させてくれました。

ペンギン・ハイウェイ』は、小学生も感じるその気持ちを、大人が感じるよりずっとシンプルに伝えてくれました。

飾ってないからこそ響くときもあります。

 

どちらもファンタジー要素があるので、それを聞いて読むのを躊躇う人もいると思います。

しかし、そこを一歩踏み出してほしい。

子供向けのようで大人向け、そんなおすすめの2冊です。

 

 

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